DXの思考法 日本経済復活への最強戦略

書籍キャッチコピー
DXの真髄を見事に解き明かした。これからのビジネス、社会を考える必読書
著者名
西山圭太(著), 冨山 和彦(解説)
出版社名
文藝春秋
価格
1650
ページ数
272
出版年月日
2021/04/13

参考動画:Society5.0を目指したアーキテクチャセミナー(冨山 和彦)



本書のポイント

  • 経営レベルでDXを考えるとき必要なのは、一つの企業だけではなく産業全体の変革(Industrial Transformation:IX)の白地図(自社の置かれた競争環境)を描き、そこに自らの存在を描き込むという発想である。
  • 縦割りの構造であるピラミッド構造ではなく、横と縦のつながりを持つレイヤー構造のアーキテクチャで新しい産業、社会を捉え、構築し、表現するべきである。

レビュー

まず断っておきたいことは、DXの具体的な話やすぐ使えるソリューションを期待している方にはおすすめできないということである。本書は全体を通じて非常に高い視座からDX(Digital Transformation)を語っており、内容自体も抽象的で高度だからだ。一方、現状の世の中の、特に日本企業のDXに疑問を持っている方や行き詰まっている状況を打破したい方には新たな視点を提供してくれる。本書のターゲットはそんな方である。

日本におけるDXという言葉の使われ方の軽さ、皮相さは目を覆いたくなるレベルだ。ハンコをなくす、リモート会議をやる等、DXで語られる話のほどんどはちょっと昔にIT化の文脈で語られたことの言い変えに過ぎない。いわゆるコンサルもDXネタで飯を食うためにDXと言うなのIT化推進プロジェクトを売り込みまくる、なんちゃってDXごっこが跳梁跋扈している状況である。社内にDX専門の組織を作ってもその状況はあまり変わっていないことが現状だろう。

本書はそんな日本社会の問題を分析し、経営レベルの視点でDXに必要な視点として、IXという考え方や白地図、レイヤー構造、それからなるアーキテクチャについて解説している。著者の西山氏は「IX(Industrial Transformation)時代の地図のようなものを描くのが本書の目的だ」と述べているように、全体を通じて物事を抽象化し、構造として捉えることの重要性が論じられている。本書のキーメッセージとして大きく2つ紹介したい。

まず、デジタル化時代の白地図を書くこと、そしてそこに自らの存在を書き込むことの重要性である。白地図とは自社の置かれた競争環境のことであり、DXは自社のことだけを考えるだけではいけない、ということを示している。デジタル化が進む時代に変容しつつあるのはここの企業経営の在り方だけではなく、市場そのものも変容している。つまりIXが起こっているのである。その環境を把握するために、白地図は欠かせない。加えて、この白地図の中にどう自社の存在を書き込むのか(本書では「本屋にない本を探す」と表現されている)について、第5章で詳細が紹介されているのでぜひそちらを参照していただきたい。

2つ目に、レイヤー構造あるいはアーキテクチャとして捉えること、さらに武器として使うことの大切さが本書全体を通じて繰り返し語られている。本書で言うアーキテクチャとはビジネス、産業、社会を複雑なややこしいシステムとして捉え、それに対して人間(社会)がソフトウェアのロジックを基本において立ち向かうためのものである。アーキテクチャを捉えることは新たなビジネスパターンを探求し、複雑な事象をうまく扱うことで価値を生むことにつながる。アーキテクチャで考えるときには、これまでの思考法から離れ、状態の差分で考える発想への転換が必要である。本書では第7章にてコンポーネントやインターフェースという言葉を使って解説されている。抽象度が高い話ではあるが、この視点の有無がDXの成功と失敗を分ける分岐点とも言える重要な視点である。

全体を通じて抽象度が高く内容が高度であるためAmazonレビューでは若干低評価になっているが、DXに行き詰まっている経営者やDX推進責任者にとって、DXが進まない問題の本質をこれまでとは全く違う側面から発見できる一冊である。

目次

第1章 デジタル時代の歩き方
第2章 抽象化の破壊力―上がってから下がる
第3章 レイヤーがコンピュータと人間の距離を縮める
第4章 デジタル化の白地図を描く
第5章 本屋にない本を探す
第6章 第4次産業革命とは「万能工場」をつくることだ
第7章 アーキテクチャを武器にする
第8章 政府はサンドイッチのようになる
第9章 トランスフォーメーションの時代
解説 本書は、全てのビジネスパーソンへの応援的挑戦状(冨山和彦)

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レビューワー

Toru_Hasegawa

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