【ファンをつくる力 デジタルで仕組み化できる、2年で25倍増の顧客分析マーケティング】バンダイナムコネクサス相原様 お薦め書籍インタビュー

本インタビューでは、バンダイナムコネクサス相原様に、お薦め書籍、キャリア、情報収集方法、仕事内容などについてお伺いしました。

 

相原さんについて

バンダイナムコネクサス所属のデータアナリスト。プロダクトアナリティクスオフィスに所属し、主にスマートフォンアプリのゲーム分析に従事。売上最大化に貢献するためのデータ分析を担当し、アドホック分析による施策提案やBI作成、戦略策定のための売上試算などを含めた分析を行う。また、機械学習を利用した高度な分析も行い、ビジネスサイドの意思決定を支援する業務を担当している。

 

相原さんインタビュー

お薦め書籍「ファンをつくる力 デジタルで仕組み化できる、2年で25倍増の顧客分析マーケティング」について

ー 今回紹介する書籍のタイトルと、その内容について教えてください

相原:はい、今回紹介させて頂くのは、「ファンをつくる力 デジタルで仕組み化できる、2年で25倍増の顧客分析マーケティング」という本です。この本には、エンタメ業界においてデータ活用していくにはどういう観点が必要なのか、デジタルを通して事業を成長させていくためにはどういう観点が必要なのかが書かれています。

書籍概要

川崎ブレイブサンダースのマーケティングを統括してきた藤掛直人氏による書籍。本書では、これまでの歩みを振り返りながら、ファン層の拡大に寄与したデジタル戦略を、他の業種や個人でも生かせる再現性の高い施策のエッセンスとして抽出し、紐解いていく。今やどんな商品、サービスを提供する企業でも求められる「ファンをつくる力」。そのために有益な方法論を、豊富な実例とともに仕組み化できるものとして解説する。

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ー なるほど、このエンタメ業界で、いかにデータ活用するかということが書かれている書籍なんですね。この本のおすすめポイントを教えて頂けますか?

相原:この本のオススメポイントは、データ活用を戦略的な目的達成のための手段として、どう使うのかということが学べる点です。バスケットボールチーム「川崎ブレイザーズ」を事例に、データ活用によってファンを作る、実践的なプロセスや考え方が学べます。

 

ー 具体的に印象に残っているエピソードや事例があったりしますか?

相原:個人的に印象に残っているのが、「限られたリソースをいかに注力させていくか」という話です。例えば、川崎ブレイザーズは元々単体で赤字の企業であったこともあり、効果が分からないことに対して大規模な投資が出来ませんでした。その中で、当時投資対効果が分からなかったYoutubeやTiktokを顧客をファン化する手段としてリソースの集中と選択をすることで、ファンを増やすことに成功しました。

ー 数ある施策の中で、YouTubeとTikTokに寄せた根拠なども書かれているのですか?

相原:はい。特にYoutubeでの事例は参考になるかなと思います。Youtubeでは最初は投資対効果が分かっていませんでしたが、小さく始めて実際に成果を出すことで、リソースをYoutubeに注力させる根拠が得られました。ここで役に立ったのが、チケット初購入者を対象にしたアンケート調査でのデータで、初購入者がチケット購入前に見た媒体として最も大きい媒体がYoutubeだったようです。このように新しい施策に対しても意思決定プロセスにデータを上手く活用することが出来ることが分かります。このようなことが出来ない業界もあるとは思いますが、目的に沿った意思決定プロセスは非常に参考になります。

 

ー なるほど。書籍を深く読めば、施策を意思決定するプロセスも理解できるようになるのですね。

相原:そうです。本当にそのプロセスや意思決定の背後にある根拠を理解することができるので、読者にとって大変参考になる内容だと思います。

 

ー 書籍の内容が実際に業務の中で役に立った事例など、具体的なエピソードはありますか?

相原:この本を書いた方は元々ゲームでプロデューサーをやっていた方で、今の私と結構近い感じのポジションの方だと感じています。どこの会社の分析でも、大量にデータはあるが、アクションに落とし込めていないという話はよくある話だと思います。

アクションにつなげるためには、データ活用を行う前に、どういうアクションを取るべきかを先に決めて、逆算してデータ活用をしていく必要があります。我々も結構気を抜いてしまうと、目的やアクションのところが抜けた状態で、「この分析手法が面白そうだからやろう」と進めてしまうことが往々にしてあります。そういった観点で、アクションからの逆算意識を保つために役立っています。

 

ー 確かに、アクションにつながる分析は重要ですよね

相原:上記に加えて、データがあるだけでは使われないものになってしまうことが多いので、データ活用を仕組み化することが大切だと思っています。私はデータサイエンティスト的な立場ではなく、データアナリスト的な立場として関わっているので、データ活用を通じて、意思決定のスピードを上げていくことが重要だと感じています。例えば、BIツールに落とし込むというのも一つの手段ですし、他にも効果検証のプロセスを一連のプロセスとして策定するといった取り組みも有効です。実際に、この本を読んでからそういった取り組みを始めるようになり、実践しています。

 

ー 意思決定のスピード感について、例えば、このような仕組みで早いサイクルで回しているといった事例などは紹介されているのでしょうか?

相原:はい、この本はスポーツアナリティクスの分野で、データの仕組み化を通じてPDCAを1週間単位で回せるようになった事例が載っています。試合単位で分析ができるように仕組み化したり、チケット購入窓口を一本化することで、ユーザーのIDを取得できるようになったりと、根本的な部分にも注力しています。

 

ー 確かに、チケット販売を一本化することで、リピートしているユーザーが分かるようになると、データ活用がさらに進みますよね。

相原:そうですね。データ取得構造自体を変えるようなアプローチも紹介されています。データ取得の段階が一番難しく、バイアスもかかるので、分析する前の準備段階が大変です。しかし、その辺りまで手を加えて運用していく全体の流れが参考になりました。

 

ー 確かに、そういった部分はデータ分析を学んでいる段階では気づきにくいですが、実践の段階で重要になって来ますよね。

相原:そうですね。本書の内容を理解することで、実践において重要なポイントを押さえた上で、データ活用に取り組むことができるようになると思います。

ー ありがとうございます。この著作を、どのような人にお勧めしたいと思いますか?

相原:特にデータ関連の仕事に従事している方や、データを使って事業を拡大したいと考えている方にはお勧めです。ビジネスとデータサイエンスをどう結びつけていくのかに興味がある方や、データアナリスト、グロースハッカー、マーケターなどのポジションの方にも向いています。

 

ー なるほど、データにまつわる職種の方なら全員にお勧めできるということですね。

相原:そうですね。誰が読んでも、初期の意思決定の重要性や事業会社での立ち回りが重要なポイントとなります。実際の分析の現場にいるメンバーであっても、データ活用が難しいシチュエーションや、上流でどのようなアクションが取られているかを理解することで、意思決定のズレを抑えることができます。

 

ー 意思決定のズレを抑えるために、ビジネスで様々なサービスを拡大していく分析に関わる方は、幅広く読んでおくと良いということですね。

相原:そうですね。こちらは、データ分析の理論的なことを取り扱っている書籍ではありませんが、データ分析者に必要な知見が詰まった一冊になっています。

 

キャリアについて

ー ありがとうございます。DataLearningBibliographyの読者の方にはこれからデータ人材を目指す方も多いです。そのような方のキャリアの参考にして頂くため、ここからは、相原さんのキャリアについて深堀りをしていきたいと思います。改めて経歴を簡単にお伺いしてもよろしいでしょうか?

相原:はい、新卒で入ったのはSEOコンサルのような会社で、その後バンダイナムコネクサスに入社しました。今はちょうど3年が経過しています。もともとはSEO領域で、ウェブサイトの売り上げを最大化させるためのコンサルティングをしていました。

 

ー なぜSEOコンサルからデータアナリストに転職したのかについて、もう少し詳しく教えて頂けないでしょうか?

相原:ありきたりではあるんですけど、SEOという視点ではウェブサイト全体から見たとしても、一つの手段でしかありません。SEO施策だけでは個別最適になってしまい、サイト全体で考えた場合の全体最適を実現できていないということもありました。なので、全体最適の視点から売り上げを最大化していくというところに挑戦したいという気持ちが強くありました。

 

ー 確かに、全体のマーケティング施策の中の一つとしてSEOがあるっていう感じですよね。

相原:そうですね。SEO以外の選択肢がいいというシチュエーションでも立場上、SEOのことしか提案できないというもどかしさもありました。そして、技術面でも、SEOコンサルの時はExcelを使って分析するといった簡単なデータ分析のみでした。大規模なデータを扱う、より高度なデータ処理スキルを身につけたいという思いもあって、データアナリストという職種に転職しました。

 

ー なるほど。キャリアアップしていくときに、関わる領域を広げていくか、もっとコアなSEOスキルを身につけていくかという選択があると思うんですけど、その中で広げる選択を取っていったのはどうしてですか?

相原:やっぱり自分の中で、全体を通してどう効率化していくか、最適化していくかというところにはすごく興味があるので、その観点から広く関われる方向に進んでいったんだと思います。

 

ー 全体最適に関わりたい、より高度な技術に関わりたいという想いからデータアナリストへの転職を決められたのですね。ありがとうございます。

 

情報収集方法について

ー ここからは、普段の情報収集についてお話をお伺いできればと思います。普段、どのような情報源から情報を集めていますか?

相原:正直に言うと、データアナリストは基本的に課題解決のために動くため、課題解決に必要な手段を検索で見つけることが多いです。特によく見るのは、よく使うサービスやツールに関する情報です。例えば、弊社ではGCPを使っており、BigQueryなどのリリースノートにはしっかり目を通します。また、Pythonの公式ドキュメントもよく見ます。

 

ー 公式ドキュメントを中心に情報収集をされているのですね。QiitaやStack Overflowといった情報源もあると思いますが、どのように使い分けをされていますでしょうか?

相原:QiitaやStack Overflowは、課題に行き詰まったときや類似する課題に対してどう対処しているのか知るために使います。一方で、リリースノートは、新しい技術のアップデートを把握し、それをどのように業務に活かすかを考えるために利用します。技術のスキルアップのためにリリースノートを読むことが多い一方で、普段の業務の課題解決ではまずQiitaなどを見て、気になった内容があれば、その後に公式ドキュメントを確認するという流れで進めます。

 

ー なるほど、基本的に課題がある場合と普段の最新情報を得るための情報源として使い分けているという感じですね。

相原:そうですね。課題解決に関してはQiitaやStack Overflowを使い、最新情報の収集にはリリースノートや公式ドキュメントを活用しています。

 

現在の仕事について

ー ありがとうございます。最後のトピックとして、今の職場について簡単にお伺いできればと思います。普段どんな仕事をしているのかについて教えてください。

相原:我々の仕事は事業の最大化、例えば、スマホアプリ、家庭用ゲーム、ECのような幅広い事業に対する売上や顧客数の最大化を目的にしています。特に、私はスマホアプリの事業最大化を目的に仕事をしています。まず目標があり、その目標を達成するために、どのターゲットに対してどういう問題があるのかという問題特定を行い、それをもとに売上試算を行ったり、全体戦略や戦術の数値面のサポートを行っています。また、ゲームの中でいろんな施策を回していくと思いますが、その施策に対して、その施策がどうだったのか、悪かったのか良かったのか、何が良かったのか悪かったのかという要因調査を行い、その原因をもとに対策や施策面を提案し、実行してもらうような流れでPDCAを回していくことで、ゲームをより良くしていくのが主な仕事です。運営側と並走しながらやっていくことが多いですね。

 

ーなるほど、戦略構築における数値面のサポートが主な業務なんですね。目標決定のプロセスにおいて、目標を決めるところから関わるのか、ある程度プロデューサーが決めたものを施策化するところが主なのかというと、どういったバランスですか?

相原:弊社のプロセスでは、プロデューサーが決めたものを施策化するといった側面が強いですね。ただ、売上試算などの部分では、プロデューサーと議論し、どのような戦略を取るべきかというところまでサポートしています。

 

ー イメージとしては、トップダウンで大きな数字が降りてきて、それをブレイクダウンして、例えばユーザーの属性ごとにいくら売上を上げるかといった部分に落とし込むイメージでしょうか?

相原:イメージとしては、新規ユーザーや既存ユーザー、課金したかどうかといった切り口を初期の段階でよく使います。例えば、「今年この目標を達成するためには、既存の重要なアクティブユーザーが何人いないといけない」「そのためには継続率がこれぐらい、課金率がこれぐらい、ARPUがこれぐらい必要だ」といった具合に、数値面でサポートしていく形です。

 

ー なるほど、新規ではなくて、既存アプリの場合とかだと、数値がある程度見えているので、それをベースにしていく感じなんですね。

相原:そうです。既存アプリの場合、データがある程度揃っているので、それをもとに分析やサポートを行っています。

 

ー 業務の中で、どのような面白さややりがいを感じるポイントはどこでしょうか?

相原:そうですね。バンダイナムコネクサスは、バンダイナムコグループの会社であるため、プロデューサー層との距離が他の外部分析会社と比べて近いのが特徴です。このため、プロダクトに関わる時間が多く、意思決定や目標設定部分などにも関われるところがあります。また、業務改善の取り組みやプロダクトの効果検証、施策の作り方など定型化されていないことが多いため、そういった面のサポートから深く入れることができるのが楽しいです。

 

ー なるほど、事業会社に近いイメージの働き方なんですね。では、逆に外部の分析会社であることの利点は何でしょうか?

相原:外部の分析会社である利点もあります。例えば、事業会社の中にいると、個別の知見が集まるだけですが、データの専門会社であることにより、データアナリストの仲間がたくさんいて知見を共有したり、勉強会で高め合ったりすることができます。また、他のタイトルでうまくいった知見を横展開することもできるので、そのあたりは外部にあることが強みの一つだと思います。

 

ー 確かに、普通の受託分析会社のように、情報を経由したり、ナレッジ共有ができたり、苦手なところのフォローができるというメリットがありますね。また、グループ会社であることから、より深く関われるというバランスがちょうど良いですね。

 

ー 最後に、今後データ人材になりたい人やデータ分野に興味を持っている方々に何か伝えたいことやメッセージはありますか?

相原:我々のような立場では、ビジネスに関わっているため、売り上げを上げなければいけないとか、データ活用がどれだけ売り上げにつながるかということがシビアに見られる面があります。そのため、データ活用を目的を持って意識して取り組むことが重要だと思います。データにはまだ想像できないような価値がたくさんあると思っていて、それらの価値をうまく事業に活用していくことを意識すると、楽しいと思います。データ活用にはまだまだ未来があるので、一緒に楽しくデータ活用の方法を考え実行していきましょう。

 

バンダイナムコネクサス様 採用情報

今回インタビューに答えていただいた相原様が所属するバンダイナムコネクサスでは、キャリア採用を積極的に募集しています。

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