未来に先回りする思考法

書籍キャッチコピー
99.9%の人はなぜ未来を見誤るのか?
著者名
佐藤航陽
出版社名
ディスカヴァー・トゥエンティワン
価格
1760
ページ数
225
出版年月日
2015/08/27


本書のポイント

  • ビジネスの環境は大きく変化しており、未来を見誤らないためには社会の進化の流れを点ではなく線で捉える必要がある。
  • テクノロジーの進化の本質は人間の拡張、人間への教育、手のひらから宇宙へ、の3つのがある。
  • タイミングを見極める、ロジカルシンキングを疑う等、未来に先回りする「行動」を取り入れることが大切である。

レビュー

”「飛行機の実現までには百万年から一千万年はかかるだろう」
ニューヨーク・タイムズがこの記事を掲載してからわずか数週間後、ライト兄弟は人類で初めて空を飛び、この予測を覆しました。”

本書は上記の文章から始まる。一見、滑稽に思えるかもしれないが、このように人間が未来を見誤ることは極めて多い。本書ではその原因は人間の「思考法」にある、と説明している。今起きていること、つまり「点」から未来を予測しようとしてしまう思考法が問題なのだ。このような思考法では未来を当てることは難しい。

しかし、起業家や新規ビジネス創出をしたいビジネスマン、更にはその事業にテクノロジー面で関わるデータサイエンティストといった人たちにとって、未来を見誤らないことは新事業の成功率を高めるためにとても重要である。本書では過去から現代までの長い時間軸から社会変化のパターンを捉えて、「点」ではなく「線」としてその流れをつなげる思考法を紹介している。

また、テクノロジーの進化には一本の流れがある、というのが本書の主張の一つだ。例えば、テクノロジーには人間の持つ機能を拡張すること(人間の拡張)、身近な拡張から始まり最終的には宇宙など身体から離れた場所まで拡張していくこと(手のひらから宇宙へ)、そして人間がテクノロジーに合わせて生活スタイルを適応していくこと(人間への教育)、といった3つの進化の本質を持っている。こういったテクノロジーの進化の流れを「線」として捉えることが未来像を掴む上で大切だ。

こういったテクノロジー・社会の進む大きな方向性を踏まえた上で、最後に必要なのは「行動」だ。行動にはいくつかのポイントがある。例えば、適切なタイミングでアクションを起こすためには、資金や自分のスキルや経験といった「リソース」がその時にあることが必要だ。そのための準備を怠ってはいけない。また行動を起こす際、ロジカルシンキングで物事の成否を見極めるのは難しい。なぜなら新規事業のような不確実性が高い営みに対して、ロジカルシンキングで「全体像を把握」することは不可能だからだ。そういった手法の限界を理解し、将来的に新しい情報が得られるであろうことを考慮に入れた上で、一定の論理的な矛盾や不確実性をあえて許容しながら意思決定を行うことが、未来へ先回りするための近道なのだ。

起業家、DX担当者、データサイエンティスト等、事業創出に関わる方は一読する価値がある一冊だ。

目次

はじめに なぜ、99.9%の人は未来を見誤るのか
第一章 テクノロジーの進化には一本の「流れ」がある
第二章 すべてを「原理」から考えよ
第三章 テクノロジーは人類の敵なのか
第四章 未来に先回りする意思決定法
おわりに Be a doer, not a talker(評論家になるな、実践者たれ)

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レビューワー

Toru_Hasegawa

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