意思決定のための「分析の技術」

書籍キャッチコピー
最大の経営成果をあげる問題発見・解決の思考法
著者名
後 正武
出版社名
ダイヤモンド社
価格
2200
ページ数
263
出版年月日
1998/12/01


本書のポイント

  • 「分析」とはどのように行うべきか、という基本的な技術・思考方法に加えて、分析の切り口を学ぶことができる。
  • 分析における具体例や図が多く挙げられているため実務をイメージし理解しながら読み進めることができる。

レビュー

われわれは日常生活の中でも実務の中でも「分析」という言葉を多用しているが、分析とは具体的に何をどうすることなのか、正しく理解できている人は少ない。

本書では、分析を「物事の実態・本質を正しく理解するための作業」、分析の目的を「正しい認識・判断により正しい対応をする」ことであると定義している。化学の分析であれば、分析の目的を「物質の化学的組成を調べ、解明すること」と定義することができ、そのための手段として物質の物理的性質、化学的性質、光学的性質を利用した分析手法が確立している。そして、その分析に用いるための標準プロセスや試薬、機器も揃っている。

一方、データサイエンティストやコンサルタントが対象としている社会の現象・人の組織・経営課題などについての「分析手法」が蓄積され、磨かれ、改善されている機会は少なく、分析手法は確立していない。現実世界の事象・現象はいろいろな要素が複雑に入り組んでいる場合が多いため、表面の事象・現象だけを見ていたのでは認識・判断を誤り、誤った対応・行動を招く危険性がある。

本書では、これまであまり蓄積されてこなかった実務における分析の技術を体系的に解説しており、分析の技術を単独に使うのではなく、組み合わせ、併用することで複雑な事象を正しく理解することが可能となる。具体的には以下のような観点について具体例を挙げながら解説している。

分析の基本:
・大きさを考える
・分けて考える
・比較して考える
・時系列を考える

分析のバリエーション:
・バラツキを考える
・プロセスを考える
・ツリーで考える

社会現象や経営課題解決のための分析:
・不確実・ファジーな課題に積極的に取り組む
・人間の課題に積極的に取り組む

例えば、分析の基本「比較して考える」という観点であれば、以下の3点を意識し、比較する場面に応じて最も妥当な比較のあり方を考える工夫が必要であると述べている。
  • できるだけ同じものを比較すること
  • 異なるものを比較するときは、意味がありかつ比較できる指標を探すこと
  • 似たもの同士を比較する場合も、同じ要素と異なる要素を正しく見分け、異なる部分の影響を勘案しつつ合理的な比較を心掛けること

また、分析のバリエーション「ツリーで考える」という観点であれば分析の手法として有効な「ロジック・ツリー」「イッシュー・ツリー」「業務ツリー/テーマ・ツリー」「デシジョン・ツリー」の4つについてツリーの考え方と意義について解説している。例えば「ロジック・ツリー」は「あるメッセージを抜け・漏れなく正しく主張するための論理のフレームワーク」であり、この手法を用いることで正しい論理を組み立て、正しい意思決定を行う助けになる。

このように本書は分析の教科書として用いることができる。これまで何となく分析をやってきた人やこれから分析を始めていく初学者にお勧めできる一冊である。

目次

序章 分析とは何か
第1章 「大きさ」を考える
第2章 「分けて考える」
第3章 「比較して」考える
第4章 「変化/時系列」を考える
第5章 「バラツキ」を考える
第6章 「過程/プロセス」を考える
第7章 「ツリー」で考える
第8章 「不確定/あやふやなもの」を考える
第9章 「人の行動/ソフトの要素」を考える 終章 コンサルタント能力の全体像と分析の位置付け

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レビューワー

磨樒 樹生 ((株)Lupinus)

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