本書のポイント
- 伝えたいメッセージを「ピラミッド構造」で整理することで、相手が理解しやすい文章を作ることができる。
- 分類化、構造化などの論理的思考力を鍛える事で、コミュニケーション上のメリットだけではなく、課題の特定能力や問題解決能力を高めることができる。
レビュー
本書は「結論は何?」と、もう言われないための処方箋である。
「で? 結論は?」
仕事や研究で何かを報告したり説明したりした際、こう言われた覚えのある人は、案外多いのではないだろうか? コンサルタントだろうと、データサイエンティストだろうと、社会人たるもの、様々な場面で、「報告」や「連絡」が求められる。その際、ついつい思い浮かんだ順に話したり、背景や詳細を事細かに語ってしまうと聞き手にとって要領を得ない説明になってしまう。そして先程のような「で? 結論は?」といった言葉をもらうことになる。報告の形式は様々だが、ビジネスである以上、端的に情報を伝えるスキルが大事なのは間違いないだろう。
自分は一生懸命伝えているつもりなのに、「で? 結論は?」と言われると、ついつい口ごもってしまう。本記事のライターである私自身、そんな「結論ファースト」に苦戦する経験を何度もしてきた。特に、コンサルティング業界は、結論ファーストが強く求められる世界だ。そしてそれはデータサイエンティストの業界も同様である。データを収集・分析し、そこから何か示唆が得られたとしても、それが伝わらず「で? 結論は?」と言われるような結果報告では意味がない。
本書は「考える技術、書く技術」とタイトリングされているが、紹介されている”ピラミッド構造”の考え方は思考整理や文章の書き方に限らず、口頭のコミュニケーションにも応用可能な汎用性の高いものである。ピラミッド構造は、一つのメッセージを箱に入れて、それを階層構造に並べたものである。ピラミッドの縦の関係はQ&Aの関係になっている。つまり上部階層のメッセージを聞いたとき、聞き手・読み手の中に浮かぶ疑問を、下部階層で答える形だ。
簡単な例を挙げれば、以下のような形である。
上部階層:
私はダイエットをしなければならない
下部階層:
①体重の増加は生活習慣病の発生率を上げる
②見た目の悪さは社会的評価を下げる
上下の階層は、聞き手の「なぜ?」という疑問に答える形で結合されている。結論(上部階層)と、それを支持する根拠(下部階層)で成り立っているので、思考がピラミッド型に整理出来ていれば、結論に迷うことはなく、根拠も明確に並べることができる。本書では、こうした具体例が数多く紹介されており、徐々に「ピラミッド構造」について腹落ちするような構成となっている。
また応用編として、聞き手が求めている順にメッセージをストーリー化するテクニックも紹介している。文章をストーリー化することで、読み手の知識を上手く整理することができる。手順として、まず読み手が既に知っている「状況(Situation)」を投げかけ、その中で生じている「本質的な問題(Complication)」を伝え、そこから生じる「疑問(Question)」を記述、最後に疑問に対し「答え(Answer)」を持ってくる、という流れである。このように、S→C→Q→Aの順序に書けば読み手が飽きることなく、ひきつけられる文章になる。例えば、以下のように書かれていると、スッと文章が入ってくる印象を受けたのではないだろうか。
結論ファーストの話し方を苦手とする人は多い。(S)
話す順序だけを変えて、一生懸命結論から話そうとするが、上手くいかない。順序の問題ではなく、考え方が整理できていないことに原因がある。(C)
では、考え方を整理するにはどうすればよいか?(Q)
「ピラミッド構造」を意識して、思考を整理すべきだ。(A)
本書は、表紙からは一見とっつきにくい印象を受ける書籍ではあるが、「書く技術」を伝える本なゆえ、読み手にとってとても分かりやすく書かれている。具体例や応用的なフレームワークも数多く紹介されているので、読後にすぐに資料作成等に活用できる。さらに、情報のピラミッド構造化の過程で用いる分類化(グループ分け)や構造化などのテクニックは、コミュニケーション上のメリットだけではなく、課題の特定能力や問題解決能力を高めることにも繋がる。
業種を問わずビジネスに携わる人なら読んでみる価値があるが、特に「結論ファースト」の話し方に苦手意識のある人へオススメしたい一冊だ。
「で? 結論は?」
仕事や研究で何かを報告したり説明したりした際、こう言われた覚えのある人は、案外多いのではないだろうか? コンサルタントだろうと、データサイエンティストだろうと、社会人たるもの、様々な場面で、「報告」や「連絡」が求められる。その際、ついつい思い浮かんだ順に話したり、背景や詳細を事細かに語ってしまうと聞き手にとって要領を得ない説明になってしまう。そして先程のような「で? 結論は?」といった言葉をもらうことになる。報告の形式は様々だが、ビジネスである以上、端的に情報を伝えるスキルが大事なのは間違いないだろう。
自分は一生懸命伝えているつもりなのに、「で? 結論は?」と言われると、ついつい口ごもってしまう。本記事のライターである私自身、そんな「結論ファースト」に苦戦する経験を何度もしてきた。特に、コンサルティング業界は、結論ファーストが強く求められる世界だ。そしてそれはデータサイエンティストの業界も同様である。データを収集・分析し、そこから何か示唆が得られたとしても、それが伝わらず「で? 結論は?」と言われるような結果報告では意味がない。
本書は「考える技術、書く技術」とタイトリングされているが、紹介されている”ピラミッド構造”の考え方は思考整理や文章の書き方に限らず、口頭のコミュニケーションにも応用可能な汎用性の高いものである。ピラミッド構造は、一つのメッセージを箱に入れて、それを階層構造に並べたものである。ピラミッドの縦の関係はQ&Aの関係になっている。つまり上部階層のメッセージを聞いたとき、聞き手・読み手の中に浮かぶ疑問を、下部階層で答える形だ。
簡単な例を挙げれば、以下のような形である。
上部階層:
私はダイエットをしなければならない
下部階層:
①体重の増加は生活習慣病の発生率を上げる
②見た目の悪さは社会的評価を下げる
上下の階層は、聞き手の「なぜ?」という疑問に答える形で結合されている。結論(上部階層)と、それを支持する根拠(下部階層)で成り立っているので、思考がピラミッド型に整理出来ていれば、結論に迷うことはなく、根拠も明確に並べることができる。本書では、こうした具体例が数多く紹介されており、徐々に「ピラミッド構造」について腹落ちするような構成となっている。
また応用編として、聞き手が求めている順にメッセージをストーリー化するテクニックも紹介している。文章をストーリー化することで、読み手の知識を上手く整理することができる。手順として、まず読み手が既に知っている「状況(Situation)」を投げかけ、その中で生じている「本質的な問題(Complication)」を伝え、そこから生じる「疑問(Question)」を記述、最後に疑問に対し「答え(Answer)」を持ってくる、という流れである。このように、S→C→Q→Aの順序に書けば読み手が飽きることなく、ひきつけられる文章になる。例えば、以下のように書かれていると、スッと文章が入ってくる印象を受けたのではないだろうか。
本書は、表紙からは一見とっつきにくい印象を受ける書籍ではあるが、「書く技術」を伝える本なゆえ、読み手にとってとても分かりやすく書かれている。具体例や応用的なフレームワークも数多く紹介されているので、読後にすぐに資料作成等に活用できる。さらに、情報のピラミッド構造化の過程で用いる分類化(グループ分け)や構造化などのテクニックは、コミュニケーション上のメリットだけではなく、課題の特定能力や問題解決能力を高めることにも繋がる。
業種を問わずビジネスに携わる人なら読んでみる価値があるが、特に「結論ファースト」の話し方に苦手意識のある人へオススメしたい一冊だ。
目次
第1部 書く技術
第1章 なぜピラミッド構造なのか?
第2章 ピラミッドの内部構造はどうなっているのか?
第3章 ピラミッド構造はどうやって作るのか?
第4章 導入部はどう構成すればいいのか?
第5章 演繹法と帰納法はどう違うのか?
第2部 考える技術
第6章 ロジックの順序に従う
第7章 グループ内の考えを要約する
第3部 問題解決の技術
第8章 問題を定義する
第9章 問題分析を構造化する
第4部 表現の技術
第10章 文書構成にピラミッドを反映させる
第11章 文章表現にピラミッドを反映させる
追補A 構造なき状況下での問題解決
追補B 本書で述べた重要ポイントの一覧
第1章 なぜピラミッド構造なのか?
第2章 ピラミッドの内部構造はどうなっているのか?
第3章 ピラミッド構造はどうやって作るのか?
第4章 導入部はどう構成すればいいのか?
第5章 演繹法と帰納法はどう違うのか?
第2部 考える技術
第6章 ロジックの順序に従う
第7章 グループ内の考えを要約する
第3部 問題解決の技術
第8章 問題を定義する
第9章 問題分析を構造化する
第4部 表現の技術
第10章 文書構成にピラミッドを反映させる
第11章 文章表現にピラミッドを反映させる
追補A 構造なき状況下での問題解決
追補B 本書で述べた重要ポイントの一覧
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